【美術検定】2023年度の試験日はいつ?公式テキストと勉強法
美術検定の2023年受験要項が公開されています。
美術鑑賞が好きな方、アートにかかわるお仕事をされている方におすすめの検定です。
美術検定とは
美術検定は一般社団法人美術検定協会が開催する民間資格です。美術に関する幅広い知識が出題されます。美術作品の「鑑賞力」に重点が置かれており、作品を作る才能や技術は問われません。
上の級では美術鑑賞について「伝える力」も求められます。
級数・受験資格・受験料
<級数>
美術検定には4級・3級・2級・1級があります。
どの級もオンラインでの試験ですので、パソコン・タブレットと、インターネット接続環境が必要です。
※1級記述問題のみ手書き・郵送での提出可。
4級は通年実施中、3級・2級・1級は2023年11月11日(土)・12日(日)に実施されます。
<受験資格>
4級・3級・2級は誰でも受験できます。
複数の級を同時に申込し、期日中に時間をずらして受験することが可能です。
1級は美術検定2級取得者のみ受験できます。
<受験料>
4級 3,970円
3級 6,110円
2級 7,950円
1級 9,990円
各級の出題形式と難易度
4級<アートを楽しむ>
西洋美術・日本美術の基礎知識として、代表的な作品や作家が出題されます。
【出題形式】
選択式(約50問)/45分
【合格のめやす】
正答率約60%(受験者全体の正答率によって変動)
代表的な作品ばかりで合格率は高いです。1日~1週間程度の勉強で合格する方もいるようです。
3級<アートの歴史を知る>
西洋美術・日本美術の基礎知識に加え、動向や形式など美術史に関わる概念や、歴史的な流れについて問われます。
【出題形式】
選択式(約100問)/60分
【合格のめやす】
正答率約60%(受験者全体の正答率によって変動)
2級<アートの知見を広げる>
美術に関する幅広い知識、美術史に関わる様々な概念について出題されます。また、美術鑑賞の場の役割や現状についても問われます。
【出題形式】
選択式(約100問)美術史問題 約85問/60分、実践問題 約15問/30分
【合格のめやす】
正答率約60%(受験者全体の正答率によって変動)
※2級は美術史問題と実践問題、それぞれ約60%の正答で合格
2級から難易度がぐっと上がります。
1級 アートナビゲーター<アートを伝える>
美術に関する幅広い知識・情報をもとに、美術作品や美術をめぐる動向について解釈・思考ができることが求められます。さらに他者に対して、より深い作品の理解へ導くための具体的なナビゲートの方法や手段についても出題されます。
【出題形式】
選択式および記述式
【合格のめやす】
一定の基準
合格率は10%台と、かなり難易度が高いと言われています。
公式ホームページには各級の例題が載っています。
勉強方法
美術検定の勉強方法の基本は独学です。
公式テキスト・問題集が充実しているので、それらを購入して学びます。
実際にアート作品を見に行く、歴史を学ぶといったことも内容の理解に役立ちます。
<4級テキスト>
<1・2・3級テキスト>
<1・2級テキスト>
<4級問題集>
<3級問題集>
<2級問題集>
1級の問題集はありません。公式サイトの過去問などを参考に対策をしましょう。
また、通信教育の美術検定講座などもあります。
私も今年3級か2級を受ける予定です。経過は改めて記事にしていきます。
『海外にとびだそう~英語でアート!』
アートを知るうちに、海外の作品についてもっと知りたい、海外のアートファンやアーティストとコミュニケーションを取りたい、海外の方に作品を知ってもらいたい、などと思うことがあるかもしれません。
また、日本のアート市場は小さく、海外進出にチャンスを見出しているアーティストの方やギャラリストの方もいるかもしれません。
世界にはより多くの美術ファンと、大きなマーケットが待っています。
ただし、障害になりやすいのが言語の壁。
そんな時に、英語でアートについて語るお手伝いをしてくれる本をご紹介します。
『英語でアート!』では、英語圏のアート業界事情、アート関係者とコミュニケーションをとる際に必要なフレーズ、メールやレジュメのサンプルなどが紹介されています。
どちらかというと初級者向けですが、実践的でありながら、読むだけでも楽しめる内容です。
特に、英語でアートについて話したり、SNSで発信したりしてみたい方、海外進出を考えているアーティストの方にとって参考になると思います。
アート+英語なんて少しニッチなテーマだと思いますが、初心者の方でも読みやすく、かつ実践的な内容もあり、貴重な本です。
【古代エジプトの絵画】死後の世界を重視したエジプト美術
見ればすぐにそれとわかる、古代エジプト美術の独特な表現。何を意味しているのでしょうか?
エジプト美術の特徴
メソポタミア文明と同じころ(紀元前3000年ごろから)、ナイル川流域ではエジプト文明が栄え、3000年にもわたって独特の文化を築いていました。
エジプト美術の最大の特徴は、無名の作家たちが約2500年にもわたり厳格な様式にしたがって作品を作りつづけたことです。また、生きている人のためではなく、王の魂が死後も永遠に生き続けるように作られた、というのもエジプト美術の特徴です。
天体や自然のなかに存在する神々、神の子である王(ファラオ)、死者の復活や永遠の生命といった古代エジプトの宗教概念は長い歴史の中でほとんど変わりませんでした。そして、それを表現するための美術も、決められた形式を守ることが大切で、独創的なことは求められませんでした。したがってエジプト美術は何千年もの間、ほとんど変化しませんでした。
例外は、宗教改革をおこないアマルナに都を移したアメンホテプ4世の時代のアマルナ美術です。それまでの厳格な形式性から解放されたリアルな表現が用いられました。
古代エジプトでは、王や貴族の墓、木棺、パピルス、陶片などに絵画が描かれました。
その際に追及されたのは、永遠にふさわしい人体の表現でした。時代によって若干変化はあるものの、主に次のようなルールが存在しました。
- 頭や胴体、足は一定の比率で描く。
- 地位の高い人物は、より大きく描く。
- 顔は横顔とするが、目は正面を向いて描く。
- 肩、胸、腕は正面を向けて描くが、胴体と足は横向きとする。
- 足は左右の区別が付くように描き分けない。土踏まずを描く場合には、両足に描く。
- 遠近法を使わないが、集団を描くときには上下左右にずらして、少しずつ重ねて描く。
絵にあらわされた人が平たく、ねじれたように見えるのは、こうしたルールにしたがっていたからなんですね。
ただし、鳥や木などの自然描写は驚くほど精密です。
王国の衰退とともにエジプト美術も衰え、紀元前332年アレクサンドロス3世によってエジプト征服がなされると、ギリシア美術の影響の中に消えていきました。
【展覧会情報】アーティゾン美術館「アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ」「ダムタイプ|2022: remap」「石橋財団コレクション選 画家の手紙」
当ブログのテーマと同じタイトルの展覧会が京橋のアーティゾン美術館にて開催中です。
展覧会名は「アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ」。
「アートを楽しむ〜」を含めた3つテーマの展覧会が同時開催されています。
建物6階の「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap」
↓
5階の「アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ」
↓
4階の「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 画家の手紙」
の順でまわれます。
ダムタイプ|2022: remap
まずは6階のダムタイプ展。
ダムタイプはビジュアル・アート、映像、コンピューター・プログラム、音楽、ダンス、デザインなど、様々な分野の複数のアーティストによって構成されるグループです。1984 年の活動開始以来、集団による共同制作の可能性を探る独自の活動を続けてきました。
本展覧会は、第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館で展示された新作《2022》の帰国展として、アーティゾン美術館の空間にあわせて再構成したものです。
先日亡くなった坂本隆一さんも、この展覧会のプロジェクトメンバーでした。
展示は、光や音を見て、聞いて、空間ごと体感するインスタレーションです。
暗い展示室に配置された地図や言葉、世界各地の街角のノイズが、世界中の都市を想像させます。
ゆっくりとダムタイプの世界観に浸れる、落ち着いた空間でした。
アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ
お次は「アートを楽しむ 」展。
アーティゾン美術館で展開されてきた様々なラーニングプログラムの成果をもとに、厳選された所属作品がひと味違った展示方法により紹介されています。
主に絵画作品が丁寧な解説やとともに展示されていて、作品についての理解を深め、体感しやすい展示になっています。
本展覧会は
「肖像画のひとコマ ―絵や彫刻の人になってみよう」
「風景画への旅 ―描かれた景色に浸ってみよう」
「印象派の世界を体感する― 近代都市パリの日常風景」
の3つのセクションで構成されています。
1. 「肖像画のひとコマ ―絵や彫刻の人になってみよう」
このコーナーでは、17世紀オランダの画家レンブラント・ファン・レインから、美術家の森村泰昌が青木繁の《海の幸》に触発されて作成した《M式「海の幸」》まで、さまざまな肖像画が展示されています。
19世紀フランスの画家エドゥアール・マネの《自画像》の横には、マネの写真が展示してあります。
小出楢重 《帽子をかぶった自画像》の絵の横には、作品をイメージした空間が用意されています。作家と同じように、帽子やイーゼルなどの小物を持って鏡の前に立ってみることもできます。
2. 「風景画への旅 ―描かれた景色に浸ってみよう」
風景画を通して世界中を旅しよう、というコーナーです。絵に描かれた場所についての知識がパネルで紹介されていて、詳しく知ることができます。
クロード・モネ 《黄昏、ヴェネツィア》は、フランスの画家クロード・モネが67歳のときに、旅先のイタリアの都市、ヴェネツィアで見た風景を描いた作品です。夕日に染まる海に浮かぶのは、サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会。教会の向こう側に沈みゆく太陽の燃えるような光が、空、水面、教会を輝かせています。
3. 「印象派の世界を体感する― 近代都市パリの日常風景」
こちらでは、近代都市パリの情景を描いたベルト・モリゾ《バルコニーの女と子ども》とギュスターヴ・カイユボットの《ピアノを弾く若い男》が中心にとりあげられ、時代や社会的背景、作品に込められた画家たちの思いとともに紹介されています。
ギュスターヴ・カイユボット《ピアノを弾く若い男》のそばには、絵に描かれたものと同じエラール社のグランドピアノが展示されています。
各作品やテーマについて詳しく紹介した冊子が無料で配布されているので、ぜひお手に取ってみてください。
また、アーティゾン美術館の公式アプリをダウンロードすると、無料の音声ガイドを聞くことができます。
石橋財団コレクション選 画家の手紙
最後は「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 画家の手紙」です。
石橋財団コレクションの中から、坂本繁二郎ら近代の画家の手紙にまつわる作品、あるいは手紙そのものが展示されています。
3つの展覧会はそれぞれ見ごたえがあり、一点一点の作品がさすがのクオリティなので、時間をかけてゆっくり見るのがおすすめです。
私は1時間半で全てまわりましたが、もっといてもいいと思いました。
【開催概要】
5月14日(日)まで。
【展覧会情報】OKETA COLLECTION: TIME MIXED ~ 室町時代から現代、そして未来へ ~
表参道のスパイラルホールで開催されているアート展「OKETA COLLECTION: TIME MIXED」に行ってきました。
OKETA COLLECTIONは、コレクターの桶田俊二・聖子夫妻が収集してきた骨董や現代アートのコレクションです。特に国内外の優れた現代アートを集めたコレクションとして注目されています。
今回の展覧会では、室町時代の骨董品から、注目の現代アーティストの作品、デジタルアートの作品まで、時代やジャンルを超えたアート作品が同じ空間に展示されています。
会場に入ってすぐに出迎えてくれるのは、大人気の現代アーティスト、友沢こたおさんの作品。
メインのコーナーには、貴重な盆栽から最近のデジタルアート、李氏朝鮮の磁器から現代作家の立体作品まで揃っています。
なかなか大胆な組み合わせ。
日本にこんな個人コレクターがいらっしゃって、コレクションを一般公開されているなんて素晴らしいと思います。
今回の展覧会は入場料無料なので、ぜひ訪れてみてください。
4月23日まで。
【展覧会情報】
【ハンムラビ法典碑】美術品として残るバビロニアの法典
今回はパリのルーヴル美術館が所蔵する古代文明の作品を紹介します。
メソポタミア文明とバビロニア王朝
ペルシア湾に注ぐティグリス川とユーフラテス川に囲まれた地域(現在のイラク共和国)はメソポタミア地方と呼ばれていました。
今から約5000年前、ここでエジプトとほとんど同時に人類最初の文明であるメソポタミア文明が始まります。
メソポタミア地方は交通の便がよく貿易が栄えましたが、ほかの民族の侵略も受けやすく、さまざまな国家によって支配されました。
シュメール→アッカド→バビロニア王朝→アッシリア→新バビロニア→アカイメネス朝ペルシア→ササン朝ペルシアと支配者が移り変わり、その美術もまた、形を変えて受け継がれました。
ハンムラビ法典とは
長い混乱の時代を迎えていたメソポタミア地方の統一を果たしたバビロニア王朝のハンムラビ王は偉大な王でした。
ハンムラビ法典は紀元前1770年ごろにハンムラビ王が作った法典で、世界で最も古い法律の一つです。
「目には目を、歯には歯を」の言葉で有名ですね。
282条からなり、刑罰、財産相続、婚姻などについて細かく規定されています。
ハンムラビ法典碑と彫刻の意味
ハンムラビ法典は、高さ225cmの玄武岩の石柱に、楔(くさび)形文字で刻まれています。
そして上部には、法律の完成を正義の神シャマシュに報告するハンムラビ王の姿が浮き彫りになっています。
玉座に座っているのが王かと思いきや、立っているのが王なんですね。
浮き彫りとは、平面に絵や文字が浮き上がるように見える彫ること、およびその彫刻で、レリーフとも言います。
浮き彫りや金属工芸などのペルシア美術は、ヨーロッパや中国、日本の美術にも影響を与えています。
【ショーヴェ洞窟の壁画】旧石器時代の美術作品
現在、ヨーロッパやアジアで、数万年以上も前に描かれた壁画が見つかっています。
最も古い洞窟壁画の一つが、フランス南東部アルデッシュ県に位置するアルデッシュ ショーヴェ・ポンダルク洞窟の壁画です。
2014年に世界文化遺産に指定されています。
いつ描かれたの?
紀元前3万1000年前後、氷河期の終わりの旧石器時代に描かれたと推測されています。
3万年以上も残っているなんて驚きですね。
洞窟の奥深いところに描かれており、また、2万年前の落石の影響で発見時まで洞窟が閉ざされていたため、壁画の保存状態がいいそうです。
誰が見つけたの?
ショーヴェ洞窟の壁画は1994年に3人の洞穴学者、ジャン=マリー・ショーヴェ (Jean-Marie Chauvet)、クリスチャン・イレール (Christian Hillaire)、エリエット・ブリュネル=デシャン (Eliette Brunel-Deschamps) によって発見されました。
ショーヴェ洞窟は発見者のショーヴェにちなんで名づけられました。
何が描かれているの?
サイ、野牛、馬、ライオン、マンモスなどのさまざまな動物が描かれています。
約8500㎡の洞窟内で、1000点以上の絵が発見されています。
なぜ絵を描いたの?
旧石器時代の人たちは狩りをして生活していたため、獲物をたくさんつかまえられるようにとの願いを込めて、絵を描いたのではないかと考えられています。
実物は見られるの?
残念ながら、研究者など特別に許可された方以外は実物を見ることはできません。
洞窟壁画は外気に触れると急速に傷んでしまうため、厳重に保護する必要があるのです。
そのかわり、ショーヴェ洞窟近くのヴァロン・ポンダルクに復元センター「キャベルヌ・デュ・ポンダルク」が作られました。グラフィック・アーティストのジル・トセロによって洞窟が再現され、壁画の見事なレプリカを見ることができます。
3万年前から人びとが願いを込めて絵を描いていたなんて、ロマンを感じますね。
ユネスコウェブサイト:
https://whc.unesco.org/ja/list/1426